2024.03.28コラム

祖父母の面会交流について

1 令和6年1月30日開催の法制審議会家族法制部会第37回会議において、「家族法制の見直しに関する要綱案」が取りまとめられ発表され、同年3月27日には、衆院法務委員会が開かれ、実質審理に入る見通しになりました。

同要綱案においては、「共同親権」の導入が注目されていますが、同要綱案ではほかにも「親以外の第三者と子の面会交流」について規律を設けるものとされています。

「親以外の第三者」というのは、主に「祖父母」が念頭に置かれています。

2 この点、従来、祖父母の面会交流権は、法令上の根拠がないことを理由に認められておらず、最高裁第一小法廷令和3年3月29日決定においても、「父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできない」と判示されていたところです。

3 しかし、今回の要綱案では、親以外の第三者である祖父母にも、限定的ではありますが、面会交流の申立が可能になるような規定が設けられたわけです。

4 では、どのような場合に、祖父母が面会交流が認められるのでしょうか。

今回の要綱案では、「その者と子の交流についての定めをするために他に適当な方法がないとき」に限る、とされています。

この「他に適当な方法がないとき」というのは、要綱案を作成した法制審での議論を見るに、子の出生以来、祖父母が子と同居しており、祖父母と子との間に愛着関係が形成されていたにもかかわらず、後に祖父母と父母との関係が悪化して祖父母と子との交流が絶たれたというような場合など、父母を介して交流を回復できないようなときが挙げられています。

つまり、法制審も、あくまで「子の利益」のために面会交流が必要な場合への救済措置として、祖父母自体が申立をすることを念頭に置いていると考えられます。

5 したがって、同要綱案を受けた法整備後の裁判実務においても、基本的には、子の自己肯定感の形成や自尊心の育みに資するような、出生後、子に愛情をもって、父母と同程度に関わり合いを持ってきた祖父母等親族に、面会交流が認められることになると予想します。

6 なお、婚姻生活中に相手方の祖父母との関係性が悪いことが離婚の原因の一つになった方や、今まで相手方の祖父母とは疎遠であった方は、そのような状況でも、相手方の祖父母が面会交流を申し立てることができるのか不安に感じられると思います。

法制審ももちろん皆さんの懸念は認識しており、監護親や子が無用な紛争に巻き込まれることとなれば、子の養育環境の安定性を害し、かえって子の利益を害するといった事態が生じないようにという点から、上述のとおり、「他に方法がないとき」という要件を追加しています。

7 いずれにしても、今まで以上により一層、離婚後「子のため」になることについて、真摯に考えていく必要があります。