2024.09.17コラム

夫の隠し口座(財産)を知る方法はあるのか?

最近は共働きの家庭を中心に、それぞれの財産はそれぞれが管理しているので他方配偶者がどんな財産を持っているのか全く知らないというご家庭が増えています。あるいは、共働きではないが、主たる生計維持者である夫からは生活費をもらうだけで、財産管理は夫がやっているので夫の財産を把握していないというご家庭も一定数あるかと思います。
これらの家庭では、いざ離婚となったときに、配偶者の財産がわからない、何か調べる方法はあるのか、と聞かれることがあります。

これについて、まず、「裁判所が当事者の財産を職権で洗いざらい調べることはない」ということはご理解いただく必要があります。
ただ、だからといって、任意で開示したものしか財産分与の対象とならないとすれば、当事者は財産を隠し放題ということになりかねません。

そこで活用できる制度として、「調査嘱託」という制度があります。

調査嘱託とは、裁判所が官庁や会社等の団体に対して事実の報告を求める制度です。実際には当事者から裁判所に対して、調査嘱託をしてもらいたいとの申し出をし、裁判所が調査の必要性があると判断したときに、はじめて採用されます。
この「調査の必要性」というのは、単に「相手には隠し財産があるはずだから調べてほしい」というだけでは認めてもらえず、相手が任意で開示しているもの以外にも財産を持っていることが伺えることを具体的な根拠をもとに示す必要があります。また、どこに対して調査嘱託をして欲しいのかの特定も必要ですので、「すべての銀行」というような調査嘱託の申立てはできません。銀行の場合は、どの銀行のどの支店に対して行うかも特定する必要があります。
そうはいっても、相手方が自身の財産を管理している以上、相手方が財産を持っていることが伺える具体的な根拠を示すことなど不可能ではないかと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。同居生活を営んでいれば何かしらの手掛かりを見聞きしているものです。実際に、そのような手掛かりをもとに調査嘱託を申し立て、相手方の隠し財産が見つかったというケースもあります。相手方の財産がわからないという方もあきらめず、まずは当事務所までご相談ください。

なお、令和6年5月17日に成立した「民法等の一部を改正する法律」において、新たに、当事者に対して財産開示を義務づける規定が設けられました。裁判所が必要と認めるときは、裁判所が当事者に対し、財産の状況に関する情報を開示することを命ずることができるとしたうえで、もし、この命令を受けた当事者が、正当な理由なく情報の開示を拒否したり、虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処せられます。
この改正法が施行されれば、任意で財産開示に応じるケースが増えることが期待されます。一方で、任意開示に応じなかったときには、裁判所から相手方に開示を命じてもらうため、開示命令の必要性を示す必要がありますので、やはり、相手方の財産に関する手掛かりとなる情報の重要性は今後も変わらないのではないかと思われます。