2024年の民法改正については、共同親権制度の導入が大きく話題になっています。しかし、実は、この度の改正では、養育費についても重要な法改正がありました。
そのうちの1つが、法定養育費制度の導入です。
これまでは、養育費については、義務者との間で金額についての合意をしてはじめて具体的な請求が可能とされていました。そのため、義務者が取り決めに応じない場合や、DV等の事情により取り決めに向けた話し合いができないような場合には、養育費をもらうことができず、結果、ひとり親世帯が困窮するという事例がたくさんありました。
そこで、取り決めがなくても、離婚後から暫定的に養育費を得られるようにしようと導入されたのが、法定養育費制度です。
この制度で受け取ることができる養育費の額は、子どもの最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額等を勘案して政省令で定められます。つまり、権利者、義務者の個別の事情はここでは考慮されません。
そのため、権利者が、適正な養育費の額は法定養育費よりも高額だと考えるのであれば、これまでどおり、別途、義務者に養育費の請求をして、適正な養育費の額についての協議をしたり、調停・審判で決めることも可能です。
一方で、義務者が自らの支払能力では法定養育費を支払えない、または支払えば生活が著しく困窮するという場合もありえます。その場合には、支払能力がないこと、または支払えば生活が著しく困窮することを証明することで、法定養育費の全部または一部の支払いを拒むことができます。
実際に法務省令等でどのような形で法定養育費が定められるのかは、本記事を執筆している2025年4月時点では明らかではありませんが、少なくとも、養育費算定表で定める額よりも低額にとどまる可能性が高いと予想されます。それでも、養育費の取り決めがなければ全く養育費を受け取ることができない現在の制度と比べると、子どもの利益に資する制度であることは間違いありません。
一方で、義務者としては、養育費の取り決めをしていないからといって何も支払わないでいると、ある日突然、法定養育費としてまとまった金額の請求を受ける、場合によっては強制執行を受ける可能性がありますので、注意が必要です。養育費は自分の子どものための費用ですから、これまで以上に、適切に対応することが望まれます。