来年5月の施行を目前に、法曹界では今、「共同親権」施行後の実務について、裁判所の見解も含め活発に勉強会や議論がなされています。
当事務所の弁護士らも、研修に参加したり、法務省の立案担当者の文献等を読むなど研鑽を積んでいます。
今日は、実際、「共同親権」が施行されたときに、子の監護にあたってどのような影響が出るのか、日常生活への影響についてご紹介します。
なお、まだ実例がありませんので、現段階での解釈であることはご容赦下さい。
「共同親権」といっても、子の監護は毎日の日々のことです。すべてのことに関して、常に父母が意見を一致させることは、婚姻中であっても不可能であったことと存じます。
そこで、法は、親権の行使につき、「監護及び教育に関する日常の行為」については、実際主として監護をしている方が単独で行使できることとしました(新民法842条の2第2項)。
具体的には、子の食事や服装、髪の色を染めるか、どのような人付き合いをするか、短期間の観光目的での旅行、修学旅行への参加、子の心身に重大な影響を与えないような医療行為(風邪等)の決定や、習い事などといわれています。他方、子の転居や、子の心身に重大な影響を与える医療行為(中絶手術など)子の進路に影響するような進学先の選択、入学手続や、高校を中退するなどは、「日常の行為」ではないとされています。
では、「日常の行為」ではないとすると、父母双方で決定しなければならないところですが、意見が一致しないときはどうすればよいのでしょうか。
この点、新民法842条の2第1項3号は、「子の利益のため急迫の事情があるとき」は、父母の一方が行使できるとしています。
たとえば、入学試験の結果発表後の入学手続のような一定の期限までに手続が必須のときや、虐待からの非難のために転居が必要なとき、交通事故に遭い緊急の医療行為を受けなければならないときなどです。
しかし、「急迫の事情がない」とき、たとえば半年程度の期間があるときは、家庭裁判所に申立てをして、父母いずれが当該事項について親権を行使するか決定する必要があります(新民法842条の2第3項)。
このように、共同親権のときは、離婚後も父母ともに協力関係を築き、子の意思を尊重して子の監護にあたることがより一層重要になってくると存じます。