2025.09.30コラム

離婚のとき、なぜ公正証書を作るべきなのか

ご相談で離婚調停の説明をしている際、「調停が成立したら公証役場に行けばいいんですよね」と聞かれることがあります。これに対する答えは「ノー」です。なぜなら、調停が成立すれば、裁判所が調停調書を作成するからです。

もう少し詳しく説明します。
そもそも、なぜ「離婚のときは公正証書を作るべき」と言われているのか、皆さんご存知でしょうか。これは、万が一、支払義務者が養育費や財産分与、慰謝料等の支払いをしなかったときには、訴訟を起こすことなく直ちに強制執行を申し立てることができるようにするためです。
協議の結果、離婚条件がまとまり、その内容を書面に残していたとしても、その書面はあくまで「合意の内容を記録し証明するもの」でしかありません。支払義務者が支払わなくなったときには、「約束した内容どおり支払ってください」という民事訴訟を提起し、判決を得なければ、強制執行をして相手の給料や預金等の財産から回収することはできません。
しかし、公証役場に出向き、強制執行認諾文言(支払義務者が金銭支払いをしなかったときは直ちに強制執行を受ける、という条項)を入れた公正証書を作成していれば、その後支払いが止まったとしても、改めて民事訴訟を起こさなくても強制執行をすることができるようになります(逆にいうと、公正証書を作成していても強制執行認諾文言がなければ改めて民事訴訟を提起する必要があります。)。離婚協議書に限らず、様々な金銭請求の場面で使えるものですが、離婚の場合、養育費の支払いが長期にわたることが多く、途中で支払いが途切れがちということもあり、特に、公正証書の作成が推奨されています。

そして、調停離婚の場合に裁判所が作成する調停調書には、強制執行認諾文言つき公正証書と同じく、強制執行をして財産から回収することができる力があります。調停調書だけでなく、判決や和解調書、審判書も同様です。ですから、調停調書があるのに重ねて公正証書を作成する必要はないのです。