配偶者が浮気をしていると知ったとき、浮気をされたことのショック、怒り、憎しみ…さまざまな感情が湧き起こってくると思います。
ここでは、慰謝料請求をお考えの方のために、慰謝料請求の要件、慰謝料の金額、浮気の証拠、慰謝料請求の進め方などについてお話ししていきます。
慰謝料請求の要件
慰謝料請求をするための要件としては、大きく以下のようなものが考えられます。
・不貞行為の存在
・不貞相手の故意・過失
・不貞行為により精神的な苦痛を被ったこと
・不貞行為当時、夫婦関係が破綻していなかったこと
・不貞行為と不貞相手を知ってから3年が経過していないこと
それでは、ひとつひとつ見ていきましょう。
不貞行為の存在
夫婦間には、配偶者以外の第三者と肉体関係を持たないという貞操義務があります。
これに反する行為が不貞行為となり、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求の根拠となります。不貞行為とは、主として第三者と肉体関係を持つことを意味しますが、これに限られるものではありません。
配偶者と不貞相手は、共同して貞操義務に違反したと考えられますので、慰謝料については、配偶者のみならず不貞相手にも請求することが可能です。
不貞相手の故意・過失
不貞相手に慰謝料請求を行うためには、不貞相手が不貞行為について故意・過失を有していたことが必要です。
すなわち、不貞行為に及ぶとき、配偶者が既婚者であることを知っていた、若しくは落ち度があって知らなかったことが必要となります。
不貞行為によって精神的苦痛を被ったこと
配偶者の不貞行為により精神的な苦痛を被らないというケース自体が極めてまれだと思いますが、配偶者の不貞行為により精神疾患を被るなどした場合には、慰謝料額の算定にも影響を及ぼすことがあります。
不貞行為当時に夫婦関係が破綻していなかったこと
配偶者が浮気をする前からすでに夫婦関係が破綻していたという場合には、仮に浮気が発覚したとしても、それを理由に慰謝料を請求することはできません。そのため、不貞行為当時の夫婦関係がどうであったかということも重要となります。
不貞行為と不貞相手を知ってから3年が経過していないこと
不貞慰謝料の請求は、3年間の消滅時効にかかります。時効が進行している途中で、配偶者や不貞相手が債務を認めるなど、時効の中断事由があれば別ですが、そのような時効中断事由がない場合には、相手方から時効の完成を根拠に支払を拒まれる可能性がありますので注意が必要です。
慰謝料の金額
慰謝料請求をする際に、気になるのは慰謝料の金額だと思います。
もっとも、慰謝料の金額は、不貞行為の期間・回数、婚姻期間の長さ、お子さんの有無、不貞に至った経緯、その他個々の事情を考慮して算出されるため、一律に申し上げることは難しいところです。金額としては、数十万円から数百万円まで幅広くなります。
また、不貞行為後の配偶者との関係によっても慰謝料の金額は変わってきます。
浮気によって婚姻関係が破綻し、配偶者とも離婚するという場合に比べ、浮気はあったものの、婚姻関係が破綻せず、婚姻生活を継続していくという場合には、慰謝料の金額は抑えられる傾向にあります。
不貞行為の慰謝料は、不貞相手と配偶者が連帯して負う債務となります。
例えば200万円の慰謝料が相当であるという場合、不貞相手のみに請求する場合であっても、不貞相手と配偶者に請求する場合であっても、獲得できる金額は200万円となり、それぞれから200万円(すなわち合計400万円)を獲得できるわけではありません。
浮気の証拠とは
不貞相手や配偶者に慰謝料を請求する場合、重要となってくるのが、浮気の証拠です。
不貞相手と配偶者が性交渉を行う写真や動画、ラブホテルや自宅に浮気相手と配偶者が出入りする写真や動画などが典型的な証拠ですが、探偵会社に依頼される場合には費用の問題も発生してきます。
不貞行為があったことがわかるようなメール、LINEも証拠となります。
証拠になるのかわからないようなものであっても、お持ちいただき、相談時にお見せください。
慰謝料請求の方法
いざ慰謝料請求をする場合、費用や時間的な面から、まずは不貞相手や配偶者に内容証明を送るなどして金銭の支払請求を行うことが一般的です。
金額など条件が折り合わない場合には、次に相手方との交渉を試みることになります。
交渉の結果、合意に至らないという場合には、最終的に訴訟を提起するという流れになります。
相手方が支払いの意思を示す場合でも、支払いを一括で受けるのか、分割で受けるのかという問題があります。
もちろん一括での支払いを受けることができればそれが望ましいですが、相手の資力によっては一括支払いを受けることが難しいこともあり、相手が定職に就いているなど安定収入が見込まれる場合には分割という選択もありえます。
以上、浮気・不貞の慰謝料請求をする場合の全般的なお話をしてきましたが、慰謝料請求が法的には可能な場合であっても、配偶者との今後の関係をどう考えるのか、不貞相手や配偶者に資力はあるのかなど、ご事情によっては、慰謝料請求をするかどうかを考えるべき事案があります。
どのタイミングで慰謝料をするのがベストなのかを、今後の夫婦関係等も含めた全体的な観点から考え、進めていくことが大切となってきます。