2023.12.08女性の離婚問題

夫が出て行ってしまいました。離婚しないといけないのでしょうか?

同居しているにもかかわらず、夫が、突然、一緒に住んでいた家を出て行ってしまった…。

精神的ショックはもとより、今後の生活のこと、お子さんがいるときはお子さんのこと、どうしようとなるかと存じます。

 

ここで、民法752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。

ですので、夫婦関係の再構築を求める妻が、別居した夫に対し、同居を求める調停を裁判所に申し立てることは可能です。

しかし、調停での話し合いで、夫が自ら戻ってくるという決断をしたときはいいのですが、「戻りたくない」という意思を示した場合は、調停は不成立となり、同居を強制することはできません。

では、別居したままで、今後の生活、特に、経済的な面、生活費はどうしたらよいのでしょうか。

別居の理由はどちらにあったとしても、夫婦は互いに扶養義務を負いますので(民法752条)、民法760条に基づき、収入が少ない側が多い側に「婚姻費用」を請求することができます。婚姻費用は、簡単に言うと、「生活費」です。

したがって、まずは、夫に対し、婚姻費用を請求することを検討します。

この婚姻費用の請求は、先ほどの同居の請求とは異なり、夫に収入がある場合、基本的に、夫が「支払いたくない」といくら言っても、裁判所が婚姻費用の金額を算定し、決定します。つまり、夫が戻って来なくても、経済的にはいったん生活費を確保できることになります。

次に、夫の別居が続いた場合、妻に何も責任がなくても、離婚は認められるのでしょうか。

民法770条では、「不貞」「悪意の遺棄」など離婚できる場合が限定的に列挙されているのですが、5号に「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(同条5号)と定められており、いわゆる「性格の不一致」のときは、この5号の要件を満たすかを、裁判所が判断することになります。

もっとも、「性格の不一致」とは、客観的に見て判断することが非常に難しいです。

そこで、裁判所は、「どれだけの期間別居しているか」ということを主軸として検討しています。

要は、ひとつ屋根の下で一緒に暮らせないほどに険悪な夫婦関係であれば、肉体的にも精神的にも夫婦として結びつきがなく、再構築できる見込みがないので離婚はやむを得ないと判断するのです。

その期間は、現状の裁判例では、約2~3年といわれています。

約2~3年というのは短いと考えるか長いと考えるかはそれぞれですが、逆に考えると、夫と離婚するか否か考える猶予はあるということです。

その間、婚姻費用を受け取りながら、ゆっくり考えるのが専門家としてはベストと考えます。