2024.04.11女性の離婚問題

別居中の生活費(婚姻費用)はいつからもらえますか?

婚姻費用とは

夫婦及び未成熟子が生活をしていくうえで必要となる生活費のことを、婚姻費用と言います。夫婦には、お互いに協力し扶助しなければならないという義務があるため(民法752条)、収入の多い配偶者は、収入の少ない配偶者に対して、一定の生活費を負担しなければならないとされています。

このように、婚姻費用の分担義務は、夫婦の扶助協力義務から導かれるものですので、同居か別居かにかかわらず、婚姻関係にある限りは発生します。
とはいえ、同居している夫婦の場合は、住居費や水道光熱費、携帯電話代、学費、食費等の日常生活にかかる費用を、何らかの形で収入の多い側が負担していることが多く、その結果、婚姻費用分担義務が果たされているとして、婚姻費用の分担を求めなければならない事態に陥ることはあまり生じません(とはいえ、同居中であれば婚姻費用の請求が一切できないわけではなく、請求可能なケースもあります。)。

しかし、夫婦が別居すると、それぞれが自分の世帯の住居費や水道光熱費、食費等を負担しなければなりません。また、未成熟子がいる場合は、どちらか一方が、子どもの養育にかかる費用を負担することになります。そうすると、生活費の負担状況と収入の状況にアンバランスが生じるため、婚姻費用を支払ってもらうことで調整することになります。

婚姻費用はいつからもらえるのか

ここでよく誤解されがちなのが、婚姻費用は別居したときから当然に支払ってもらえるわけではない、ということです。
確かに、婚姻費用は夫婦の扶助協力義務に基づき発生するものですので、別居によって一方配偶者を扶養しなければならない状態になれば、その時点に遡ってもらえるのではないか、との疑問も理解できるところです。しかし、現在の裁判実務では、婚姻費用を支払ってもらうことができるのは、権利者(婚姻費用をもらう側)が義務者(婚姻費用を支払う側)に対して婚姻費用を請求した時からとされています。
また、この「婚姻費用を請求した時」についても、基準を明確にするため、原則として、婚姻費用分担調停を申し立てた時とされています。ただし、婚姻費用分担調停を申し立てていなければ絶対に婚姻費用がもらえないということではなく、内容証明郵便等、婚姻費用を請求した時点を明確に特定できるような場合には、その時点からの婚姻費用を受け取ることができる可能性があります。

ただ、いずれにしても、別居後は早期に婚姻費用を請求しなければ、思わぬ損をしてしまう可能性があります。別居してから一度も生活費をもらっていない、あるいは、夫の収入からすると明らかに低額な生活費しかもらっていないという方は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。