2024.05.13コラム

どうなる共同親権④既に離婚が成立している方への影響

以前、当コラムでご紹介した、共同親権導入等を盛り込んだ民法改正については、2024年4月16日に法案が衆議院を通過し、本記事執筆時点(2024年5月13日)では、参議院で審議がなされているところです。

一般的に、法律が改正されたり新設される場合、改正または新設された法律は、将来に向かって適用され、過去のことには適用されないという原則があります。
そのため、当初は、弁護士たちの間でも、「仮に離婚後共同親権が導入されたとしても、既に離婚している夫婦には影響がないだろう」という見方が大勢を占めていたように思います。

ところが、今回の改正案では、改正法施行前に離婚した夫婦であったとしても、父母の一方が、単独親権から共同親権への変更を求める旨を家庭裁判所に申し立てることができるようになる見通しです。改正法施行後に共同親権への変更を求める申立てがあれば、家庭裁判所が、従前どおりの単独親権を維持するのか、あるいは、共同親権に変更するのかを判断することになります。

つまり、既に離婚が成立している方、あるいは近々離婚成立予定の方にとっても今回の改正は無関係ではありません。

離婚後も子の父・母として、互いに協力しながら子育てを行っているようなケースもあり、そのような家族にとっては、改正法施行後に共同親権を選択できるようになることはメリットがあると思いますが、そうではない方にとっては、今回の改正を機に、改めて元配偶者との間で親権を巡る争いが再燃するおそれがあります。

では、共同親権への変更を求める申立てがあった場合に、どのような点が考慮されるのでしょうか。
これについては、共同親権への変更も親権者変更の一種ですので、親権者変更にあたって考慮される事項がそのまま該当するものと思われます。
この点、今回の改正案では、父母の協議により定められた親権者を変更の判断にあたっては、協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮することとともに、協議の経過を考慮するにあたっては、DV等の有無、調停やADRの利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案することが明記されています。
また、そもそも親権者変更はあくまで子のために必要があると認められる場合に認められるものですから、改正法で単独親権が強制されるような事情がある場合には、子の利益を害するとして、共同親権への変更は認められないと思われます。