2024.10.14コラム

養育費の額を口約束で決めたが支払ってもらえない

離婚の際、養育費の額を口約束で決めたものの、結局支払ってもらえなかった場合、どのような対応ができるのでしょうか。

 

まず、約束があることを証明できるかどうかが重要になってきます。

養育費の協議方法については、法律上は定まった形式はなく、口頭での合意も有効です。ただ、いざ支払ってもらえなくなった場合、合意があったかどうか、また、その内容がどのようなものであったかについて争いになる可能性があります。そして、合意があることを証明できない限りは、合意内容どおりの支払いを求めることは困難だからです。

養育費の額について協議していた際のメール・LINEのやりとり、離婚後の相手方との養育費をめぐるメール・LINEのやりとり、実際に毎月養育費が振り込まれていた口座の通帳やアプリの入出金明細などから、合意内容が証明できる場合があります。

 

合意内容が証明できそうであれば、未払養育費と将来の養育費の支払いを求めて、地方裁判所に訴訟提起することが考えられます。

ここで注意が必要なのは、たとえ合意内容を立証できそうであっても、いきなり相手方の給与を差し押さえる等の強制執行はできないということです。強制執行をするためには、債務名義が必要だからです。債務名義を取得するために、まず訴訟を提起し、地方裁判所で判決をもらう必要があります。

 

手渡しでもらっていた、支払いの時期も額も区々だった、そもそも一度も支払われていない、等の事情から、合意内容の立証が難しそうだという場合には、改めて、養育費の額について元配偶者と協議をするか、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。

この場合、①養育費の額を決めるにあたっての収入はいつの時点での収入を基準にするのでしょうか。また、②いつからの養育費がもらえるのでしょうか。

 

①については、基本的には協議・調停時点での双方の収入を基準に決めることになります。ということは、離婚時よりも相手の収入が増えていれば、離婚時に考えていたよりも多い養育費をもらうことができるかもしれませんが、逆に、相手の収入が下がっている、あるいはこちら側の収入が増えている場合には、離婚時に決めていた場合にもらえたはずの額よりも下がってしまうこともあります。

 

②については、相手方が遡って支払うことに同意しない限りは、養育費を請求(ここでの請求は単に口頭で請求しただけではなく、調停の申立てや内容証明郵便の送付等によって請求の意思が明確に表明されたときとするのが一般的です。)したときからになります。

 

調停ではなく、改めて協議で養育費を定める際には、次に相手方が養育費を支払わなくなったときに備えるため、合意内容を強制執行認諾文言つきの公正証書にしておくのが望ましいです。強制執行認諾文言つきの公正証書にしておけば、万が一、再び相手方が養育費を支払わなくなったとき、次は強制執行をとることができるためです。調停で取り決める場合、裁判所が作成する調停調書に同様の効力がありますので、別途公正証書を作成する必要はありません。

公正証書の作成には手数料がかかりますが、お住いの自治体によっては、作成手数料を自治体が補助する制度が存在する場合があります。詳しくは、お住いの自治体にご相談ください。

 

以上でみたとおり、せっかく離婚時に養育費についての協議をしていても、口頭での合意しかなければ、相手方から養育費を回収するための時間と手間がかかってしまううえ、受け取れる養育費の額が減ってしまうこともあり得ます。

とはいえ、本コラムで述べたとおり、後からでも採りうる手段はありますので、このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。