子どもの将来の選択肢を広げるため、子どもにさまざまな経験をさせるために、習い事に通わせているご家庭は多いかと思います。
ただ、習い事をさせるためにはそれなりに費用がかかります。1人だけの収入ではなかなか習い事の費用を工面するのは難しいので、元配偶者にも費用を負担してもらいたいという心情は理解できるところです。
そこで、離婚の際に習い事の費用の負担についても協議し、元配偶者が費用を負担してくれることになっていたのに、後になって支払ってもらえなくなったら、どうしたらいいのでしょうか。
前提として、義務者との間で習い事の負担に関する約束があったことを証明できるかどうかがポイントになります。
どのようなものがあれば証明できる可能性があるか、また、証明できそうな場合の対応については、コラム「養育費の額を口約束で決めたが支払ってもらえない」をご参照ください。
ただ、ここで注意が必要なのは、養育費の額について約束していた場合と異なり、習い事の費用に関しては、約束の存在を証明できれば当然に全額負担が認められる、とは限らないということです。
習い事の費用についての合意の内容が具体的にどのような文言になっているのか、その文言をどのように解釈すべきか、といったことは問題になりえます。
例えば、「子の習い事の費用は全額負担する。」との合意があったとして、「習い事の費用」というのは、月謝のみなのか、必要な道具の費用も含むのか、スポーツをしている子どもの場合は試合の遠征費も含むのか、遠征に保護者が付き添うための費用はどうか、といったことは問題になるでしょう。また、離婚時に習っていたものに追加して始めた習い事はどうなるのか、離婚時に習っていたものをやめて別の習い事を始めたときはどうなるのか、ということが争いになりうるでしょう。
次に、約束があったことを証明することが難しい場合には、改めて子どもの習い事の費用について合意をすることができるかどうかが問題になってきます。
養育費の算定にあたっては、習い事の費用は必ずしも加算が認められるとは限りません。
習い事の費用の加算は、その習い事をすることについて義務者も了解していて、かつ、義務者の収入・学歴・地位などからその習い事の費用を負担させることが不合理ではない場合に限られる傾向にあります。ただし、学習塾に関しては、受験期である場合や、学習が遅れ気味の子に学習補助的な塾に通わせる必要がある場合には、もう少し柔軟に認められることもあります。
また、習い事の費用の加算が認められるといっても全額の加算が認められるわけではなく、その習い事をするのに通常必要な範囲内で、父母が折半、または父母の収入に応じた負担になることが通常です。
このように考えると、やはり、当初から、「習い事の費用を全額負担する」という合意ではなく、習い事にかかる費用をきちんと洗い出し、義務者にしてもらう具体的な金額を加算した額を養育費として決めておく方が、お互いにわかりやすく安全かと思われます。