2024.03.28コラム

どうなる共同親権③具体的内容

1 離婚後、「共同親権」となった夫婦は、具体的に、どのようにして子の権利行使をし、子を監護していけばいいのでしょうか。

2 要綱では、共同親権の場合は、子の監護に必要な事項については、「子の監護の分掌」という名で家事事件手続法において具体的な内容を整備することを求めるとともに、一方を子の監護者として定めた場合は、同監護者が、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更等ができるとしています。

しかし、実は、現時点では、共同親権下において各親権者が単独で行使できる監護及び教育に関する日常行為と、それを超える重要な行為の具体的内容は、まだ明示されていないのです。

実際何ができて何ができないのか分からないと非常に困りますよね。

この点は、日本弁護士連合会も問題視しており、共同行使が必要となる範囲を明確にするため、政府は一般の市民に理解しやすいガイドラインや説明資料を作成し、公表すべきとしています。

3 また、要綱では、共同親権であっても、「監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使」は単独でできるとされています。

民法の日常家事代理権に比せば、子のための衣食住にかかわる物や学用品の購入は単独でできると考えられます。

しかし、子の居所を指定することはできるのでしょうか。

子の進学先や受験先、海外留学、塾、習い事はどうでしょうか。

また、救急車で搬送されるような緊急医療は「急迫性」が認められると考えられますが、それ以外の医療、たとえば小児がんや小児糖尿病の治療や、予防接種、ワクチンはどうでしょうか。

子に障がいの可能性があるときに、障がい特性にあった教育を受けさせることについてはどうなのでしょうか。

先に述べたように、この点も、まだ明確になっていないのです。

4 さらに、要綱では、「特定の事項に係る親権の行使について、父母に協議が整わない場合であって、子の利益のために必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独でできる旨を定めることができる」とされています。

つまり、上述の、今後具体的内容が明らかにされる、単独で行使できない事項については、家庭裁判所で決定することになるということです。

もっとも、子は日に日に成長するので、その成長に伴っての決定は多岐にわたり、迅速に行わなければならない性質のものばかりです。

特に受験などは期限がありますし、医療の決定などは、子の健康被害に直結します。家庭裁判所において決定が遅くなると、子の権利利益を害することが想定されます。

5 このように、要綱はできているものの、共同親権で共同すべき親権の具体的内容、単独で行使できる内容、協議ができない場合に裁判所で決定すべき内容については、いまだ基準が明確化されていないのが現状です。

しかしながら、「共同親権」制度を導入するのですから、子のために父母双方が互いに「子のため」に何が必要か適宜考えることがより一層重要になってくると考えられます。