“離婚をする”と決めたとき
その決断に至るまでにも思い悩むことの連続だったと思いますが、いざ相手に離婚の意思を伝えることは非常に勇気の要ることです。
・離婚の話を出したら、相手が怒りだすかもしない
・離婚の話を出そうとしても、はぐらかされて話ができない
・離婚の話を出したけれど、全く話がかみ合わない…
離婚は双方の合意により行うものですので離婚の話を出しても、相手に離婚意思がなかったり、条件が折り合わなければ、離婚できない状況が続くことになります。
明確な離婚原因があれば、別居を経ずに離婚ということも法的には可能ですが、相手方が離婚に応じる意思がない場合、同居生活を送りながら離婚を進めることは一般に困難です。
離婚の話し合いを続けながら同居生活を続けるということ自体、精神的に負担のかかることですし、DVやモラハラ傾向のある相手の場合、心身に及ぼす悪影響は明らかです。
調停・訴訟などの法的手続を進めるのであれば、なお一層そのように言えると思います。
離婚を求めても相手が話を聞いてくれない場合には、離婚を望む側としてはどこかの段階で別居に踏み切ることを検討する必要があります。
離婚を進めるに際して、別居は重要な事実の一つですが、別居することを決意した場合に気をつけていただきたい点がありますので、次にお話しします。
お子さんに関する注意点
相手もお子さんの親権を主張する可能性が高く、親権についての争いが予想される場合注意が必要です。監護の状況は親権の判断要素の一つとなりますので、お子さんを連れて家を出ることが可能な場合には、どうかそのまま監護を続けていただきたいと思います。
ただし、お子さんの意思の尊重やお子さんのためを考え、冷静に判断する必要がありますので、迷われた際は第三者の意見なども聞いてみることも大切になります。
婚姻費用に関する注意点
別居に踏み切る場合、大きな問題として、お金の問題があります。
離婚を決意し、別居に踏み切ったとしても、生活が立ちゆかないということになれば、離婚を進めることも難しくなりかねません。
相手からの婚姻費用が支払われない場合には、婚姻費用の請求を行うことが可能ですので、これにより別居中の生活費を確保することが大切です。
また、相手からの婚姻費用が払われなくなった場合、すぐに婚姻費用の支払いを受けることが難しいこともありますので、この点を踏まえて、別居する際に当面の生活費を確保しておかれることをおすすめします。
他方で、別居されたご自身が婚姻費用を支払う側である場合、別居をしたとしても、相手に対する扶助義務としての婚姻費用の支払義務は続きますので、別居後の婚姻費用についても、支払いをしなければなりません。
正当な理由もなく婚姻費用の支払いを行わない場合、その内容によっては、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)として、離婚を求める側の有責性にも繋がりかねません。
その他の注意点
離婚を前提として家を出た場合、その後自由に元の家に出入りするということは難しくなる可能性があります。
一緒に生活をしていれば、相手のDVや浮気の証拠なども確保しやすかったかもしれません。また、相手の財産状況について知る機会があったかもしれません。
別居した場合には、相手との接触機会が減る分、相手方に関する証拠を確保する機会も減ることになりますので、別居する前にやるべきことがないか考えていただきたいと思います。
これまで離婚を切り出した後に別居するという場合を想定して申し上げてきましたが、とりわけ相手方が暴力的であるなど危険を伴うケースでは、まずは身体の安全を優先すべく、別居を先行してから離婚を切り出すなども必要となります。
万全な体制を整えて別居をすることができればそれに超したことはありませんが、現実には難しいことが多いと思います。今別居すべきなのかという点も含め、最終的にはそれぞれの状況の中での優先事項を考えていくことが大切だと思います。
当事務所では、離婚を切り出しても相手が聞いてくれないと予想される場合にどのような手順を踏めば良いのか、離婚を切り出したけれど上手くいかずに困っているなど、お一人お一人の状況に応じて実践的なアドバイスをさせていただきます。