お子さんがいる男性で離婚を考えるとき、子どもとは今後も一緒に暮らしたいという方が大半でしょう。
他方で、妻との生活が精神的に負担で、一刻も早く離婚して解放されたいという気持ちでいっぱいかとも存じます。
では、妻が「親権は譲れない」となかなか離婚に応じてくれないとき、離婚をすることを優先して、妻に親権をいったん譲り、後から親権を争って親権を得ることはできるのでしょうか。
ここで、民法819条6項が「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる」と規定していていることから、法律相談の際、いったん妻に親権を譲っても後から自分が親権者になることができるのではないですかと質問されることが多々あります。
しかし、家庭裁判所の実務的な取扱いにおいては、「当時、親権者を決定した後の著しい事情の変更」が要求される傾向にあります。
つまり、親権者を妻に決定して離婚届を出したのちに、予見できないほどの著しい事情の変更が必要、ということです。
具体的には、妻がシングルマザーになったのち、子どもを虐待して自動相談所案件になったというような非常事態が起きたときは親権者変更が認められる可能性は高くなりますが、就労状況が変わった、子の教育方針が合わない、浪費がちに見えるなどの理由ではほとんど認められないと言っても過言ではありません。
したがって、親権を獲得したいという希望を持たれている方は、今一度よく考え、親権を譲るのを早まらないでいただきたいです。