2026.06.18コラム

不貞相手への慰謝料が認められなくなった!?(令和8年6月5日の最高裁判所判決)

令和8年6月5日、最高裁判所で、不貞相手への慰謝料について「破棄差戻」という判決が出ました。

ニュースにも大きく取り上げられたのでご存じの方も多いかと思います。

同判決は、不貞相手への慰謝料請求につき、従前の最高裁判決に基づき、実務の判断基準を今一度整理して十分に検討するようにという最高裁の指針を明らかにするものですので、触れておきたいと思います。

今回の最高裁判決は、夫が妻の交際相手に対して不貞の慰謝料を請求したケースでした。

妻は、同居中ではあるものの、すでに夫と離婚について協議しており、夫側から、家計を別々に管理したり、互いのプライバシーに干渉しないことをメールで提案され、同意していました。交際相手は、妻から夫とのメールのやり取りや離婚届を見せられていたので、「夫婦関係は破綻している」と信じて、妻と肉体関係に及びました。

その後、夫と妻は離婚し、元夫が交際相手に対し「不貞だ」と慰謝料請求をしました。

このケースにつき、最高裁判所は、簡単に言うと、交際相手が、離婚届やメールのやり取りを見せられて、妻だけでなく夫の側も婚姻生活を解消する意向を示していると認識したのだから、「離婚していると信じたこと」については相当の理由はないが、「婚姻関係がすでに破綻していると信じ、かつ、そう信じたこと」については、相当の理由があったとみる余地があるので、原審は破棄差戻た上で、再度審理を尽くすように、と判断したのです。

この判決が出たことにより、不貞相手への慰謝料の検討の枠組みが今一度明らかになりました。

①まず、不貞相手と肉体関係があった当時、夫婦の婚姻関係は破綻していたか?

→「破綻していた」(例:別居など)→慰謝料の請求は認められない

→「破綻していない」→②へ

②破綻していると信じたことに相当の理由はあったか?

→「相当の理由はあった」(例:今回のケースのように、夫婦双方に離婚の意思が明らかで、離婚に向けて具体的に協議されているメールのやり取りを見せられるなど)

→慰謝料の請求は認められない

→「相当の理由はない」→慰謝料請求は認められる

また、「不貞慰謝料」は、不貞行為そのものにより婚姻共同生活の平和が侵害されたことによる慰謝料であるが、他方で、「離婚慰謝料」は、第三者の不当な干渉などにより夫婦が離婚のやむなきに至ったことを理由とする慰謝料であるため、別のものであることが明示され、「離婚慰謝料」については、第三者が夫婦を離婚させることを意図して不当な干渉をするなど、離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるかを検討すべきとされました。

したがって、今回の最高裁判決が出たことで、不貞相手への慰謝料請求が認められなくなったわけではありません。

もっとも、従来と比べて、請求する側も請求される側も、さらに、不貞の事実経過について詳細な主張・立証を尽くすことになりますので、証拠の確保が重要になってくると考えます。