婚姻後ともに暮らすと、性格、価値観の不一致、家事育児の分担の比重、子の教育方針の違い等で、当初築くことができていた情愛に基づく和やかな関係が不穏になることが誰しもあります。
そのようなとき、お互い話し合って解決できればいいのですが、日々の生活の中での鬱憤や不満ゆえ、相手に対する悪感情が募ることもあろうかと思います。
また、相手にもはや期待することができないと相互に理解することを諦めることもあるかと思います。
では、その悪感情や諦めゆえに、妻が夫を「ATM」扱いしてよいのでしょうか?
「ATM」扱いとは、夫をお金を出金できる機械扱いすることです。
夫に本当に腹が立った時に、内心で思うにとどめ、自分の感情を収めることは自由です。
しかし、口げんかの際に「あなたなんてATMだ」「お金をいれてくれさえすればいいの」というようなセリフを吐いてよいのでしょうか?
「ATM」と言われた夫は、自分はお金としか見られておらず、人間性を否定されたと自尊心を損なうことは必至です。
特に子どもがいる場合、子を養う必要から、自分のためだけでなく家族のために働いている意識が強いと思います。
そのような意識で、ときには辛い仕事も頑張っているのに、妻から何の感謝もされないばかりか、「ATM」扱いされることは耐え難い苦痛でしょう。
この「ATM」扱いのように、相手の人格否定をし、おとしめる発言は、モラルハラスメントに該当する発言です。
複数回言われたり、子や親族、友人ら他人の前で言われたりすれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当たり、離婚事由になります。
男性の場合、自身が傷ついていることを他人に話すのがはばかられる方も多いかと思います。
妻からの対応に傷つき、離婚を考えるほどに思い詰めているが、だれにも相談できないという方は、ぜひ弁護士と一緒に、今の状況で離婚できるのか、離婚した場合どうなるのかをともに考えましょう。