離婚の際、元妻と双方の収入をもとに養育費の額を取り決め、そのとおりの支払いを続けてきたものの、養育費の支払終期が来るよりも先に定年退職の時期が来るという方もいらっしゃるかと存じます。
一般的に、定年退職後の再雇用制度を利用する場合、定年前と比べると大幅に収入が下がることが多く、最初に取り決めた養育費の額を支払い続けることが難しいこともあるかと思います。
養育費は一度決めたら絶対変えられないというものではなく、養育費を取り決めた後に予測していなかった事情の変更があった場合には、養育費の額の変更が認められることがあります。
この点、定年退職については、制度上、いつ定年退職という事情が発生するかはあらかじめわかっているはずですから、「予測していなかった」事情の変更にあたらないのではないか、との疑問があるかもしれません。
しかし、定年退職の時期がわかっていたとしても、定年退職後にどのような仕事に就くのか、収入がどの程度になるのかまで予測することは困難です。
養育費を取り決める時点で定年退職の時期が迫っており、その後の収入の状況もある程度具体的に決まっているような場合であればともかく、そうでない場合には、養育費の合意の当時、予測していなかった事情の変更があったとして養育費の減額が認められる可能性が高いです。
実際に、予想された定年退職の時期が合意時から10年以上先であったケースで、定年退職の時期自体、勤務先の定めによって変動し得る上、定年退職後の稼働状況ないし収入状況について、離婚当時に的確に予測可能であったとは認められないとして、養育費の減額請求が認められた裁判例があります(広島高決令和元年11月27日、家庭の法と裁判27号44頁)。
なお、上記は養育費の例ですが、仮に離婚は成立していないが別居はしており婚姻費用の額を支払っているケースでも考え方は基本的には同じです。